【空港・物流】無人運転の未来をカタチに!豊田自動織機の「自動運転トーイングトラクタ」
今回ご紹介するのは、令和7年度 全国発明表彰において「内閣総理大臣賞」を受賞した、株式会社豊田自動織機によるデザイン「レベル4自動運転トーイングトラクタ(意匠登録第1700574号)」です。
空港で手荷物のコンテナを牽引しているあの車(トーイングトラクタ)の「完全自動運転化」に向けたデザインです。
今回は特許(技術の仕組み)ではなく「意匠(デザイン)」の解説です。運転席から人がいなくなる未来において、車はどうやって周囲の人間とコミュニケーションを取り、安心感を与えるべきなのか。その答えがこのデザインに詰まっています。
【課題】「人がいない車」が動くことへの不安
航空需要が回復する一方で、空港のグラウンドハンドリング(手荷物や貨物の運搬業務)は深刻な人手不足に陥っており、特定の条件下で無人走行が可能な「レベル4自動運転」の導入が急務となっています。
しかし、空港の滑走路周辺は、他の車両や多くの作業員が忙しく行き交う場所です。「運転手が乗っていない車」が自律的に動き回ることは、周囲の人間に「こちらに気づいているのか?」「急に動き出さないか?」という強い心理的不安を与えます。
そのため、無骨な機械ではなく、周囲に「次にどう動くか」をわかりやすく伝え、安心感と信頼感を持たせるデザインが求められていました。
【解決策】センサーとコミュニケーションの「機能美」
この課題に対し、豊田自動織機は「センサー群のスマートな統合」と「周囲とのコミュニケーション機能」を高い次元で両立させたフォルムを生み出しました。
1. 周囲に意思を伝える「表示灯」の配置
無人運転車には、「運転手の目配せや手振り」の代わりとなる機能が必要です。
公報の図面(下記図2)を見ると、ルーフ(屋根)の四隅に「表示灯」が配置されていることがわかります。これにより、車両が現在どのような状態にあるのか(前進、停止、旋回、エラー発生など)を、360度どこにいる作業員にも瞬時に、かつ明確に伝えることができます。
2. 「センサー」のスマートな統合(インテグレーション)
レベル4の自動運転を実現するには、LiDAR(レーザースキャナー)やカメラなど、多数のセンサーを搭載する必要があります。従来型の後付け自動運転車は、センサーが屋根やバンパーに無骨に飛び出しており、いかにも「機械的」で威圧感がありました。
図2および図3を見ると、この意匠では「センサー」が車両のバンパーやルーフの造形の中に美しく、かつ障害物を検知しやすい最適な位置に組み込まれています。洗練された一体感を生み出しつつ、ぶつかってセンサーが壊れるリスクも低減しています。
このデザインが内閣総理大臣賞という高い評価を受けた理由は、単に「かっこいいから」ではありません。 機械と人間が協調して働くためのHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)の最適解を示しているからです。
- 人間中心の設計: 人が乗らない車であっても、周囲の「人」に安心感を与えるための造形。
- 機能の視覚化: 「私は周囲を見張っていますよ(センサー)」「今から曲がりますよ(表示灯)」という情報を、デザインそのものが語りかけています。
来るべき自動運転社会における、産業車両の新しい「あるべき姿(スタンダード)」を提示した優れた意匠です。
【効果】労働力不足の解消と、スマート空港の実現へ
この洗練されたレベル4自動運転トーイングトラクタが空港に導入されることで、以下の効果が期待されています。
- 労働力不足の抜本的解決: 限られた人員で、より多くの手荷物や貨物を正確に運搬できるようになります。
- 安全性の向上: 作業員のヒューマンエラーによる事故を防ぎ、人と自動運転車が安全に共存できる環境が構築されます。
意匠・特許情報まとめ
| 意匠に係る物品 | トーイングトラクタ |
|---|---|
| 意匠登録番号 | 意匠登録第1700574号 |
| 意匠権者 | 株式会社豊田自動織機 |
| 創作者 | 森 博樹、藥師 忠幸 |
| 出願日 | 令和3年3月12日 (2021.03.12) |
| 登録日 | 令和3年11月8日 (2021.11.08) |
| 受賞歴 | 令和7年度 全国発明表彰 内閣総理大臣賞 ※併せて「発明実施功績賞」を受賞 |
| 関連リンク | J-PlatPatで公報・経過情報を確認 |
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