Patent Memo
技術の「すごい」を特許公報・意匠公報から読み解く解説メモ

【空港・物流】無人運転の未来をカタチに!豊田自動織機の「自動運転トーイングトラクタ」

自動車・モビリティ 意匠(デザイン) 作成日: 2026.02.18
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今回ご紹介するのは、令和7年度 全国発明表彰において「内閣総理大臣賞」を受賞した、株式会社豊田自動織機によるデザイン「レベル4自動運転トーイングトラクタ(意匠登録第1700574号)」です。

空港で手荷物のコンテナを牽引しているあの車(トーイングトラクタ)の「完全自動運転化」に向けたデザインです。

今回は特許(技術の仕組み)ではなく「意匠(デザイン)」の解説です。運転席から人がいなくなる未来において、車はどうやって周囲の人間とコミュニケーションを取り、安心感を与えるべきなのか。その答えがこのデザインに詰まっています。

【課題】「人がいない車」が動くことへの不安

航空需要が回復する一方で、空港のグラウンドハンドリング(手荷物や貨物の運搬業務)は深刻な人手不足に陥っており、特定の条件下で無人走行が可能な「レベル4自動運転」の導入が急務となっています。

しかし、空港の滑走路周辺は、他の車両や多くの作業員が忙しく行き交う場所です。「運転手が乗っていない車」が自律的に動き回ることは、周囲の人間に「こちらに気づいているのか?」「急に動き出さないか?」という強い心理的不安を与えます。

そのため、無骨な機械ではなく、周囲に「次にどう動くか」をわかりやすく伝え、安心感と信頼感を持たせるデザインが求められていました。

【解決策】センサーとコミュニケーションの「機能美」

この課題に対し、豊田自動織機は「センサー群のスマートな統合」と「周囲とのコミュニケーション機能」を高い次元で両立させたフォルムを生み出しました。

自動運転トーイングトラクタの全体斜視図
図1:レベル4自動運転トーイングトラクタの全体斜視図。力強さと先進性を感じさせるフォルムです。(出典:意匠登録第1700574号)

1. 周囲に意思を伝える「表示灯」の配置

無人運転車には、「運転手の目配せや手振り」の代わりとなる機能が必要です。

公報の図面(下記図2)を見ると、ルーフ(屋根)の四隅に「表示灯」が配置されていることがわかります。これにより、車両が現在どのような状態にあるのか(前進、停止、旋回、エラー発生など)を、360度どこにいる作業員にも瞬時に、かつ明確に伝えることができます。

前方からの斜視図(表示灯・センサー位置)
図2:ルーフ四隅の「表示灯」と、バンパー下部に格納された「センサー」。(出典:意匠登録第1700574号)

2. 「センサー」のスマートな統合(インテグレーション)

レベル4の自動運転を実現するには、LiDAR(レーザースキャナー)やカメラなど、多数のセンサーを搭載する必要があります。従来型の後付け自動運転車は、センサーが屋根やバンパーに無骨に飛び出しており、いかにも「機械的」で威圧感がありました。

図2および図3を見ると、この意匠では「センサー」が車両のバンパーやルーフの造形の中に美しく、かつ障害物を検知しやすい最適な位置に組み込まれています。洗練された一体感を生み出しつつ、ぶつかってセンサーが壊れるリスクも低減しています。

後方からの斜視図(センサー位置)
図3:後方や側面の「センサー」も、死角をなくしつつ車体デザインに自然に溶け込んでいます。(出典:意匠登録第1700574号)
💡 意匠(デザイン)のポイント:HMIの具現化

このデザインが内閣総理大臣賞という高い評価を受けた理由は、単に「かっこいいから」ではありません。 機械と人間が協調して働くためのHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)の最適解を示しているからです。

  • 人間中心の設計: 人が乗らない車であっても、周囲の「人」に安心感を与えるための造形。
  • 機能の視覚化: 「私は周囲を見張っていますよ(センサー)」「今から曲がりますよ(表示灯)」という情報を、デザインそのものが語りかけています。

来るべき自動運転社会における、産業車両の新しい「あるべき姿(スタンダード)」を提示した優れた意匠です。

【効果】労働力不足の解消と、スマート空港の実現へ

この洗練されたレベル4自動運転トーイングトラクタが空港に導入されることで、以下の効果が期待されています。

  • 労働力不足の抜本的解決: 限られた人員で、より多くの手荷物や貨物を正確に運搬できるようになります。
  • 安全性の向上: 作業員のヒューマンエラーによる事故を防ぎ、人と自動運転車が安全に共存できる環境が構築されます。

意匠・特許情報まとめ

意匠に係る物品 トーイングトラクタ
意匠登録番号 意匠登録第1700574号
意匠権者 株式会社豊田自動織機
創作者 森 博樹、藥師 忠幸
出願日 令和3年3月12日 (2021.03.12)
登録日 令和3年11月8日 (2021.11.08)
受賞歴 令和7年度 全国発明表彰 内閣総理大臣賞
※併せて「発明実施功績賞」を受賞
関連リンク J-PlatPatで公報・経過情報を確認
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