Patent Memo
技術の「すごい」を特許公報・意匠公報から読み解く解説メモ

【意匠・オーディオ】どこでも立体音響空間に!ソニーの「分離可能なワイヤレススピーカー」

意匠・デザイン 家電・オーディオ 作成日: 2026.02.24
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今回ご紹介するのは、令和7年度 全国発明表彰において「日本経済団体連合会会長賞」を受賞した、ソニーグループ株式会社によるデザイン「スピーカー(意匠登録第1750619号)」です。

この意匠は、ポータブルシアターシステム『HT-AX7』として実際に市販され、オーディオファンやインテリア好きの間で大きな話題を呼びました。

ホームシアター=据え置きの大きな機械、という常識を覆し、好きな場所へ持ち運んで「分離・合体」させることで自分だけの立体音響空間を作り出す、革新的なデザイン(創作者:大澤真積氏)を紐解きます。

【課題】本格的なシアター環境は「場所」と「見た目」を縛る

映画館のような立体音響を自宅で楽しむためには、これまではテレビの周りに複数のスピーカーを固定配置する必要がありました。

しかし、この方式には「その場所(ソファなど)でしか良い音で聴けない」という縛りがあります。さらに、いかにも「オーディオ機器」というプラスチックや金属のメカメカしい外観は、モダンなリビングや寝室のベッド周りなど、リラックスしたい空間では視覚的なノイズになっていました。

【解決策】分離する3in1構造と、空間に溶け込むファブリック

この課題に対し、ソニーは「持ち運べるコンパクトさ」と「インテリアへの調和」を極限まで高めたデザインを生み出しました。

ソニー 分離可能なワイヤレススピーカーの斜視図(合体時)
図1:ベースユニットの上に2つのリアスピーカーが美しく乗った「合体状態」のフォルム。(出典:意匠登録第1750619号)

1. マカロンのように分離する「3in1」のスピーカー

本機は、サウンドバーとして機能するベースユニット(小型フロントスピーカー)の上に、2基の円盤型リアスピーカーが乗るという構成になっています。

普段は図1のように一体化して音楽を鳴らしたり充電したりしますが、映画などを見る際は、上の2つのリアスピーカーを取り外して自分の斜め後ろに置くだけで、その場が瞬時に「立体音響空間」へと変化します。メカニカルな配線は一切なく、完全ワイヤレスで完結する機能美です。

ソニー 分離可能なワイヤレススピーカーの使用状態を示す参考図
図2:使用状態を示す参考図。分離した2つのリアスピーカーを自分の背後に置くことで、そこが自分だけの立体音響空間になります。(出典:意匠登録第1750619号)

2. 「オーディオ感」を消し去るシームレスな外装

もう一つの大きな特徴が、繋ぎ目のないモノトーン調のファブリック(布地)で全体を包み込んだ点です。これにより、存在感が良い意味で抑制され、部屋の棚やクローゼット、ベッドサイドなど、どこに置いてもインテリアにすっきりと馴染みます。

あえて「持ち運び用の取っ手」などの過剰な装飾を完全に排除し、極限までノイズを減らすことで、シンプルで美しい形状をキープしたまま持ち運べるようデザインされています。

💡 意匠(デザイン)のポイント:サステナビリティとの融合

この製品は、見た目の美しさだけでなく、環境への配慮も高く評価されています。 全体を覆うファブリック素材にはペットボトルを原料としたリサイクル生地が用いられ、本体パーツにも再生プラスチックが使用されています。最新のシームレスな3D製法を駆使し、「デザイン性」「音響性能」「サステナビリティ」のすべてを妥協なく成立させている点が、日本経済団体連合会会長賞という最高峰の評価に繋がりました。

【効果】「好きな場所」が映画館になる自由

この意匠によって、私たちは以下のような新しい視聴体験を手に入れました。

  • 場所の解放: テレビの前だけでなく、ベッドルーム、タブレットを持ち込んだ書斎、ベランダなど、家中どこでも本格的なシアター環境を作れます。
  • インテリアへの調和: 過剰な装飾を削ぎ落とし、ソファやクッションのように空間に溶け込みます。

「音の楽しみ方」そのものをリデザインした、ソニーらしいワクワクする意匠登録です。

意匠情報まとめ

意匠に係る物品 スピーカー
意匠登録番号 意匠登録第1750619号
意匠権者 ソニーグループ株式会社
創作者 大澤 真積
出願日 令和5年3月10日 (2023.03.10)
登録日 令和5年8月2日 (2023.08.02)
受賞歴 令和7年度 全国発明表彰 日本経済団体連合会会長賞
※併せて「発明実施功績賞」を受賞
関連リンク J-PlatPatで公報・経過情報を確認
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