Patent Memo
技術の「すごい」を特許公報・意匠公報から読み解く解説メモ

【環境・リサイクル】おむつから新品のパルプを再生!ユニ・チャームの「高分子吸水材の溶解技術」

環境・リサイクル 素材・化学 作成日: 2026.02.27
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今回ご紹介するのは、令和7年度 全国発明表彰において「朝日新聞社賞」を受賞した、ユニ・チャーム株式会社による「使用済み衛生用品の高分子吸水材を処理する方法および使用済み衛生用品からパルプ繊維を回収する方法(特許第6290475号)」です。

紙おむつなどの衛生用品には、尿などの水分を大量に吸収してゼリー状に固める「高分子吸水材(SAP)」が使われています。これがあるおかげで快適に過ごせる一方で、使用済み製品をリサイクルしようとすると、水分を吸ってパンパンに膨らんだSAPがパルプ繊維に絡みつき、分離を極めて困難にしていました。

この特許は、化学の力(オゾンと有機酸)を使って厄介なSAPを跡形もなく溶かして無力化し、新品同様の高品質なパルプを取り出すことに成功した、持続可能な社会に向けた大きなブレイクスルー技術です。

【課題】膨らんだ「吸水ポリマー」がリサイクルの邪魔をする

使用済みの紙おむつを焼却せず、リサイクルして新たな紙おむつの原料にする「水平リサイクル」は、CO2排出量や森林資源の保護の観点から長年の悲願でした。

紙おむつは主に「パルプ繊維」と「高分子吸水材(SAP)」でできています。しかし、水分を吸ってゲル状に大きく膨張したSAPは、パルプ繊維の間にガッチリと入り込んでしまいます。物理的に洗ったり絞ったりしても、SAPの粘着成分がパルプに残りやすく、回収したパルプの品質(吸水性や衛生面)が大きく低下してしまうという深刻な課題がありました。

【解決策】「オゾン」と「有機酸」で吸水材を完全に溶かし切る

この課題に対し、ユニ・チャームは「物理的に分ける」のではなく、「化学的にSAPの分子構造を破壊して溶かす」というアプローチを確立しました。

オゾン濃度と高分子吸水材の質量減少率を示す表
表1:オゾン水への浸漬時間と高分子吸水材(SAP)の状態変化を示すデータ。時間の経過とともにSAPが粒子状からゾル状へ、最後は「溶解」して質量が劇的に減少することがわかります。(出典:特許第6290475号)

1. オゾン水による分子鎖の切断

公報のデータ(上記表1)が示すように、膨らんだSAPをオゾンを含んだ水(オゾン水)に浸すと、オゾンの強力な酸化力によってSAPの立体網目構造が切断されます。これにより、ゼリー状に固まっていたSAPはドロドロの液体(ゾル状)へと変化し、最終的には水に溶け込んでパルプから簡単に洗い流せるようになります。オゾンは除菌・消臭効果も高いため、衛生用品のリサイクルには一石二鳥の働きをします。

2. 有機酸(クエン酸など)による溶解の加速

さらに特筆すべきは、オゾン水にクエン酸などの「有機酸」を加えることで、この処理を劇的に加速・向上させる点です。公報のデータによれば、有機酸を含むオゾン水で処理すると、短時間で効果的に紙おむつ全体の質量を減らし(つまりSAPを溶かし出し)、処理効率を飛躍的に高めることが実証されています。

処理別パルプ繊維の灰分と吸収性能測定結果の表
表2:回収されたパルプ繊維の性能評価。本発明の処理(実施例3)を経たパルプは、不純物(灰分)が少なく、吸水性能も未使用のパルプと同等に回復しています。(出典:特許第6290475号)
💡 技術のポイント:新品と同等の「高純度パルプ」が復活

この化学処理の凄さは、表2の「灰分と吸収性能測定結果」に表れています。従来の単なる洗浄処理(比較例1)ではSAPの不純物が残留し、パルプの吸水倍率が半減してしまいますが、本発明の処理(実施例3)を経たパルプは、処理前の新品パルプ(バージンパルプ)と全く遜色のない吸水倍率・保水倍率を叩き出しています。

【効果】「おむつからおむつへ」の究極の循環型モデル

この特許技術により、以下のような社会的なインパクトが生まれています。

  • 水平リサイクルの実現: 回収したパルプを再び高品質な紙おむつ等の原料として再利用することが可能になりました。
  • 環境負荷の劇的な低減: 焼却処理に伴う温室効果ガス(CO2)の排出や、新しいパルプを製造するための森林伐採を大幅に削減できます。

技術の力で「ゴミ」を「価値ある資源」へと鮮やかに生まれ変わらせた、日本が世界に誇る環境リサイクル発明です。

技術情報まとめ

発明の名称 使用済み衛生用品の高分子吸水材を処理する方法および使用済み衛生用品からパルプ繊維を回収する方法
特許番号 特許第6290475号
特許権者 ユニ・チャーム株式会社
発明者 小西 孝義、平岡 利夫、山口 正史、亀田 範朋、市浦 英明
出願日 平成29年2月21日 (2017.02.21)
※原出願日: 平成26年1月17日 (2014.01.17)
登録日 平成30年2月16日 (2018.02.16)
受賞歴 令和7年度 全国発明表彰 朝日新聞社賞
※併せて「発明実施功績賞」を受賞
関連リンク Google Patentsで全文を読む
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