Patent Memo
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【環境・エネルギー】石炭火力でCO2を大幅削減!IHIの「アンモニア混焼ボイラ」

環境・エネルギー インフラ・機械 作成日: 2026.03.04
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今回ご紹介するのは、令和7年度 全国発明表彰において「発明賞」を受賞した、株式会社IHIの「複合燃焼炉及び複合燃焼ボイラ(特許第7049773号)」です。

地球温暖化対策として、燃やしてもCO2を一切排出しない「アンモニア(NH3)」を、火力発電所の新しい燃料として活用する取り組みが世界中で進んでいます。既存の石炭火力発電所で石炭にアンモニアを混ぜて燃やす(混焼する)ことができれば、大規模な設備投資なしにCO2を劇的に減らすことができます。

しかし、アンモニアは「非常に燃えにくく、燃やすと大気汚染の原因となるNOx(窒素酸化物)が発生しやすい」という大きな技術的壁がありました。この特許は、ボイラ内の「バーナの配置」を巧みに制御することで、NOxの発生を抑えながらアンモニアを安定して燃焼させる画期的なシステムです。

【課題】アンモニアを燃やすと「NOx」が出てしまうジレンマ

火力発電所の巨大なボイラ(燃焼炉)の壁面には、燃料を噴射して燃やす「バーナ」が縦に何段も並んで設置されています。

アンモニアは分子の中に窒素(N)を含んでいるため、そのまま石炭と一緒に燃やすと、空気中の酸素と結びついて有害な「NOx(窒素酸化物)」が大量に発生してしまいます。また、アンモニアは石炭よりも燃焼速度が遅いため、炉内の温度が下がってしまい、火が消えやすくなる(燃焼が不安定になる)という問題もありました。

【解決策】「一番下の段」で石炭を燃やし、その上でアンモニアを燃やす

IHIは、複数段あるバーナの「どこからアンモニアを吹き込むか」という点に着目し、炉内の温度分布と化学反応を完璧にコントロールする配置を発明しました。

複合燃焼ボイラの全体構成図
図1:複合燃焼ボイラの全体構成図。炉(1)の壁面にバーナが複数段(上中下)に配置され、微粉炭(石炭)とアンモニアがそれぞれ供給される仕組みになっています。(出典:特許第7049773号)

1. 最下段の石炭バーナで「高温の土台」を作る

この特許の最大のポイントは、「一番下の段のバーナ(図2のM21, N21)ではアンモニアを燃やさず、微粉炭(石炭)だけを燃やす」という点です。

熱は下から上へと昇っていきます。そのため、最下段で燃えやすい石炭をしっかり燃やして高温の火炎(土台)を作っておくことで、炉全体の温度低下を防ぎます。

バーナの配置と燃料供給の例を示す図
図2:バーナの配置例。最下段(M21)と最上段(M23)には微粉炭を供給し、中段(M22)にアンモニアを供給して燃焼させる構成が示されています。(出典:特許第7049773号)

2. 未燃のアンモニアでNOxを「還元」する魔法

そして、その上段のバーナ(図2のM22, N22)からアンモニアを炉内に吹き込みます。 下から昇ってくる高温のガスによってアンモニアは安定して燃焼します。さらに、炉内の酸素が少ない状態(還元雰囲気)でアンモニアを熱分解させると、未燃焼のアンモニア成分(NHi)が、他の場所で発生したNOxと化学反応を起こし、NOxを無害な窒素(N2)と水(H2O)に分解(還元)してくれるのです。

💡 技術のポイント:燃料そのものを「脱硝剤」として使う

アンモニアは燃やすとNOxの原因になりますが、実は条件を整えれば「NOxを消す薬(還元剤)」にもなります。この特許は、炉内の燃焼プロセスを立体的に設計することで、アンモニアが持つ「毒」と「薬」の性質を相殺させ、クリーンな排気を実現した見事なエンジニアリングです。

【効果】既存インフラを活かした最速のカーボンニュートラル

この技術により、既存の石炭火力発電所の設備を大きく造り替えることなく、燃料の一部をアンモニアに置き換える(混焼率を上げる)ことが可能になりました。

  • CO2の大幅削減: 燃料の20%をアンモニアに置き換えるだけでも、巨大な発電所から排出されるCO2を劇的に減らすことができます。
  • クリーンな排気: 懸念されていたNOxの発生を環境基準値以下に抑え、安定した電力供給を維持できます。

日本の重工業メーカーの知恵が詰まった、世界のエネルギー転換を現実にするための極めて重要かつ実用的な発明です。

技術情報まとめ

発明の名称 複合燃焼炉及び複合燃焼ボイラ
特許番号 特許第7049773号
特許権者 株式会社IHI
発明者 伊藤 隆政
出願日 平成29年3月31日 (2017.03.31)
登録日 令和4年3月30日 (2022.03.30)
受賞歴 令和7年度 全国発明表彰 発明賞
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