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技術の「すごい」を特許公報・意匠公報から読み解く解説メモ

【自動車・モビリティ】軽の常識を覆す美しさ!日産の「先進EV軽自動車」デザイン

自動車・モビリティ 意匠・デザイン 作成日: 2026.03.06
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今回ご紹介するのは、令和7年度 全国発明表彰において「発明賞」を受賞した、日産自動車株式会社による「乗用自動車」のデザイン(意匠登録第1657341号)です。

この意匠は、日本市場におけるEV(電気自動車)普及の起爆剤となった軽自動車「日産サクラ(SAKURA)」のベースとなったものです。

軽自動車という非常に厳格なサイズ規格(全長・全幅・全高の制限)の中で、いかにしてEVらしい「新時代の先進性」と、日常使いのクルマとしての「上質な親しみやすさ」を表現するか。その難題を、日本の美意識を取り入れたシームレスな造形で解決した見事なデザイン(創作者:渡邉 和彦 氏)を紐解きます。

【課題】「軽自動車らしさ」からどう脱却するか

日本の軽自動車は、決められたサイズ枠の中で室内空間を最大限に広げるため、どうしても「四角い箱」のような形(トールワゴン型)になりがちです。

しかし、内燃機関(エンジン)を持たない新世代のEVとして登場するクルマが、従来のガソリン軽自動車と同じ「よくある形」であっては、ユーザーに新しい価値やワクワク感を提供できません。「限られたサイズの中で、いかにしてワンランク上の車格感と未来感を生み出すか」が、大きなデザインテーマでした。

【解決策】EVの象徴「シールドフロント」と水引のモチーフ

日産は、エンジンの冷却を必要としないEVの特性を最大限に活かし、フロントマスクのデザインを根本から再構築しました。

乗用自動車の前方斜視図
図1:前方斜視図。従来のラジエーターグリルがなくなり、滑らかな「シールド」で覆われたフロントフェイスがEVであることを力強く主張しています。(出典:意匠登録第1657341号)

1. 日本の伝統美を感じさせるフロントフェイス

公報の図面(上記図1)を見ると、フロントグリルがあった場所が、つるりとした滑らかなパネル(シールド)で覆われていることがわかります。そこに日産特有のVモーションデザインがシャープな光のラインで表現されています。

さらに、実際の製品(サクラ)では、このシールドの内側に日本の伝統工芸である「水引」からインスピレーションを得た繊細なパターンが施されており、冷たいメカニカルな印象になりがちなEVに、温かみのある日本の美意識を吹き込んでいます。

乗用自動車の後方斜視図
図2:後方斜視図。水平基調のすっきりとしたリアコンビネーションランプと、張り出したフェンダーが、軽自動車とは思えない安定感(スタンスの良さ)を生み出しています。(出典:意匠登録第1657341号)

2. 豊かな面構成が生む「ワンランク上の車格感」

図2のリアビューやサイドビューからは、ドアパネルなどのボディサイドが単なる平らな板ではなく、豊かに抑揚のある滑らかな面で構成されていることが読み取れます。

光の移ろいを美しく反射するこの「クリーンで張りのある面構成」によって、軽自動車特有の薄っぺらさを払拭し、普通乗用車に引けを取らない上質さと存在感を実現しています。

💡 意匠(デザイン)のポイント:静かで滑らかな走りを視覚化

EVの最大の魅力は、ガソリン車にはない「静粛性」と「滑らかな加速」です。この意匠は、ボディ全体の段差を極力なくしたシームレスな造形によって、その「スッと滑るように走るEVの心地よさ」を、視覚的にもユーザーに感じさせるようデザインされています。

【効果】「EVを日常のクルマにする」という使命の達成

この洗練されたデザインを纏った軽EVは、日本の多くのドライバーに受け入れられ、数々のカー・オブ・ザ・イヤーを受賞する大ヒット作となりました。

「先進的だけど、どこかホッとする」。そんな絶妙なバランスを突いたこの意匠は、EVという新しい乗り物を、日本の日常風景に自然に溶け込ませるという極めて重要な役割を果たしました。

意匠情報まとめ

意匠に係る物品 乗用自動車
意匠登録番号 意匠登録第1657341号
意匠権者 日産自動車株式会社
創作者 渡邉 和彦
出願日 令和1年10月16日 (2019.10.16)
登録日 令和2年3月26日 (2020.03.26)
受賞歴 令和7年度 全国発明表彰 発明賞
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