【スポーツ・IT】体操競技の「公平な採点」を実現!富士通の「AI採点システム」
今回ご紹介するのは、令和7年度 全国発明表彰において「発明賞」を受賞した、富士通株式会社による「採点方法、採点プログラムおよび採点装置(特許第7067561号)」です。
体操競技のテレビ中継などで、選手の技が高度化・複雑化しすぎて「今のひねり、何回回ったの?」「どこが減点されたの?」と疑問に思ったことはありませんか?
この特許は、3Dレーザーセンサで選手の動きを立体的に捉え、関節の角度などを自動計算して「技の難度(Dスコア)」や「出来栄え(Eスコア)」の判定を支援する、スポーツ界の公平性を劇的に高めた世界初のAI採点システムです。
【課題】人間の「目」による判定が限界を迎えていた
体操をはじめとする採点競技では、選手の身体能力の向上に伴い、技のスピードと複雑さが年々増しています。空中で複数回ひねりながら回転するような技を、審判員は瞬時に目視で確認し、手足の曲がり具合などの細かい減点項目を正確に判定しなければなりません。
しかし、コンマ数秒の間に全身の関節角度を正確に見極めるのは、いかに熟練した審判員であっても至難の業であり、審判への極度なプレッシャーや、判定のバラつき(公平性の担保)が国際的なスポーツ界の大きな課題となっていました。
【解決策】3Dセンシングと骨格モデルによる「数値化」
この課題を解決するため、富士通は選手に一切のセンサー(マーカー)を装着させることなく、遠隔からレーザーを照射して骨格の動きを高精度にトラッキングするシステムを開発しました。
1. 全身の「関節位置」を毎秒立体的に把握
公報の図面(上記図1)が示すように、システムは競技中の選手の3次元データから、肩(SHOULDER)、肘(ELBOW)、腰(HIP)、膝(KNEE)などの主要な関節の座標(X, Y, Z)を連続的に抽出します。これにより、カメラの死角になる部分があっても、選手が今どのような姿勢をとっているかを3Dモデルとして正確に再構築できます。
2. 技の「ルールDB」と照合して自動評価
抽出された骨格データは、あらかじめシステムに登録されている「技のルールデータベース」と照合されます。 たとえば、つり輪の「十字懸垂」という技であれば、両腕の角度や腰の曲がり角度をシステムが自動で計算します。
「腕の角度が水平から15度以内なら減点なし、16度~30度なら0.3点の減点(Eスコア)」といった厳密なルール規定に当てはめ、客観的な数値を基に評価を行います。
このシステムの素晴らしい点は、AIがすべてを勝手に決めるのではなく、図2のように「角度のグラフ」や「多視点からの3D映像」を審判員に提示し、最終的な判定は人間が自信を持って下せるようにサポートしている点です。テクノロジーと人間の専門知識が最高の形で融合しています。
【効果】誰もが納得できるクリアな競技の世界へ
この採点システムの導入により、スポーツ界に以下のような革新がもたらされました。
- 公平性の完全な担保: 審判の死角や目測のブレがなくなり、どの国の選手であっても数値に基づいた完全に公平な採点が行われます。
- 判定の迅速化と審判の負担軽減: 際どい判定で競技が長時間ストップすることが減り、審判員の心理的プレッシャーも大幅に軽減されます。
「より高く、より美しく」を追求するアスリートの努力に、テクノロジーの力で誠実に応える、日本発の素晴らしい発明です。
技術情報まとめ
| 発明の名称 | 採点方法、採点プログラムおよび採点装置 |
|---|---|
| 特許番号 | 特許第7067561号 |
| 特許権者 | 富士通株式会社 |
| 発明者 | 内藤 宏久、松本 剛、清水 智、矢吹 彰彦、平野 秀明 |
| 出願日 | 平成29年9月5日 (2017.09.05) ※国際出願日 |
| 登録日 | 令和4年5月6日 (2022.05.06) |
| 受賞歴 | 令和7年度 全国発明表彰 発明賞 |
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