Patent Memo
技術の「すごい」を特許公報・意匠公報から読み解く解説メモ

【ロボット・機械】風の乱れをリブで整える!三菱電機の「高効率プロペラファン」

ロボット・機械 環境・省エネ 作成日: 2026.03.07
[広告スペース]

今回ご紹介するのは、令和7年度 全国発明表彰において「発明賞」を受賞した、三菱電機株式会社の「軸流ファン、及び、その軸流ファンを有する空気調和機(特許第6234589号)」です。

エアコンの室外機や換気扇などで広く使われているプロペラファン(軸流ファン)。一見すると昔から変わらない形のように思えますが、実は流体力学に基づく高度な「空力設計」が詰め込まれた精密部品です。

この特許は、ファンの中心部に「魔法のリブ(突起)」を設けることで、空気の乱れを綺麗に整えつつ、羽根を極限まで薄く・軽くすることに成功した、相反する課題を同時に解決する見事な機械要素技術です。

【課題】中心部の「風の乱れ」と「重さ」のジレンマ

プロペラファンが回転するとき、外周部に比べて中心部(モーターが繋がるボス部)は動くスピードが遅いため、空気を押し出す力が弱くなります。すると、中心付近で空気が淀んだり、逆流したりして「気流の乱れ(剥離や渦)」が発生し、送風効率の低下や騒音の原因となっていました。

さらに、羽根の根元部分は遠心力や空気抵抗を最も強く受けるため、折れないように分厚く頑丈に作る必要があります。しかし、根元を分厚くするとファン全体が重くなり、モーターに負荷がかかって消費電力が増えてしまうという厄介なジレンマを抱えていました。

【解決策】気流を導き、骨格となる「変形リブ」の配置

三菱電機はこのジレンマに対し、ボス部から羽根の表面に向かって放射状に伸びる「複数のリブ(突条)」を設けるという画期的な構造を発明しました。

軸流ファンの中心部の拡大図
図1:ファンの中心部の拡大図。中心のボス部から羽根の表面に向かって、渦を巻くように複数のリブ(9a, 9b等)が延びていることがわかります。(出典:特許第6234589号)

1. 空気をスムーズに流す「整流効果」

公報の図面(上記図1)を見ると、リブがただの直線ではなく、ファンの回転方向に向かってなだらかにカーブしながら伸びていることがわかります。また、このリブは外側に向かうにつれて高さが低くなるように設計されています。

この緻密に計算されたリブの立体形状によって、中心付近の淀んだ空気をスムーズに外側へと導き、空気の剥離や渦の発生を強力に抑え込む(整流する)ことができます。

空気調和機の室外機の斜視図
図2:空気調和機(エアコン)の室外機の斜視図。この高性能ファンは、こうした室外機内部に搭載され、効率的な熱交換を担っています。(出典:特許第6234589号)

2. 薄肉化と高強度を両立する「骨組み構造」

さらに素晴らしいのは、このリブが「和傘の骨組み(梁)」のような役割を果たし、羽根の根元の強度を飛躍的に高めている点です。

リブによって構造的な強度が担保されるため、羽根そのものの厚みを極限まで薄く削ることが可能になりました。流体力学的なアプローチが、結果として材料力学的な軽量化をも実現しているのです。

💡 技術のポイント:1つの工夫で複数の課題を解決

「リブを立てる」というたった1つの形状変更で、①整流による効率アップ、②騒音の低減、③強度確保、④薄肉化による軽量化、という4つものメリットを同時に生み出しています。洗練された優れた特許の特徴とも言える「一石多鳥」の美しいアイデアです。

【効果】静かで省エネなエアコンを支える縁の下の力持ち

この高効率・軽量プロペラファンがエアコンの室外機等に搭載されることで、以下のような絶大な効果をもたらしています。

  • 大幅な省エネ: ファンの軽量化と送風効率の向上により、モーターの消費電力を削減し、エアコン全体の省エネ性能を引き上げます。
  • 静音性の向上: 気流の乱れ(風切り音)が減少するため、夜間でも静かで快適な住環境を提供します。

目立たない部品でありながら、私たちの快適な生活と地球環境の保護を力強く支えている、日本の精緻なモノづくりの結晶です。

技術情報まとめ

発明の名称 軸流ファン、及び、その軸流ファンを有する空気調和機
特許番号 特許第6234589号
特許権者 三菱電機株式会社
発明者 濱田 慎悟、幸本 宏治、菊地 洋輔、池田 孟、小林 孝、平川 誠司、吉川 浩司、中川 英知、牧野 浩招
出願日 平成27年8月3日 (2015.08.03) ※国際出願日
登録日 平成29年11月2日 (2017.11.02)
受賞歴 令和7年度 全国発明表彰 発明賞
関連リンク Google Patentsで全文を読む
J-PlatPatで公報・経過情報を確認
[広告スペース]