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【IT・通信・ソフト】手をかざす位置が「光」でわかる!オプテックスの非接触スイッチ

IT・通信・ソフト 食品・ライフスタイル 作成日: 2026.03.23
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今回ご紹介するのは、令和7年度 近畿地方発明表彰において「滋賀県知事賞」を受賞した、オプテックス株式会社の「能動型物体検出センサ(特許第6795136号)」です。

病院や食品工場、そして近年では衛生面から一般的な店舗でも急速に普及している「非接触スイッチ(手をかざすと開く自動ドア)」。便利である反面、設置業者にとっては「見えない赤外線のエリア」を正確に設定するのに大変な苦労が伴っていました。

本特許は、センサ本体の「LEDの光り方」を工夫するだけで、目に見えない検知エリアの中心を誰でも簡単かつ正確に探し出せるようにした、現場の課題解決に直結する素晴らしいアイデア技術です。

【課題】「ここに手をかざす」のステッカーと実際のセンサ位置が合わない

非接触スイッチを導入する際、壁面やガラス面に「ここに手をかざしてください」というステッカー(サイン)を貼り、そのステッカーに向けてドア上部のセンサから赤外線を照射して検知エリアを設定します。

しかし、赤外線は人間の目には見えません。そのため、設置業者は「おそらくこの辺りだろう」と感覚でセンサの角度を調整し、実際に手をかざしてドアが開くかを何度もテストする必要がありました。

もしステッカーの位置と実際の検知エリアの中心が少しでもズレていると、利用者がステッカー通りに手をかざしても「ドアが開かない!」というトラブルになり、クレームや再調整の依頼に繋がるという大きな課題を抱えていました。

【解決策】手の位置に応じた「光の点滅」で、見えないエリアを可視化する

オプテックスは、専用の測定器などを使わず、センサ自身に「自分がいま、どれくらい強く手を見ているか」をリアルタイムで発信させるというアプローチでこの課題を解決しました。

自動ドアにおける非接触スイッチの設置図
図1:非接触スイッチの設置イメージ。ドア上部のセンサ(1)から赤外線が照射され、壁面のステッカー(5)の前に検知エリア(A)が形成されます。(出典:特許第6795136号)

1. 「検知レベル」を点滅スピードに変換する設定モード

本技術のセンサには、通常動作とは別に「検知レベル報知モード(調整モード)」が搭載されています。

このモードをONにしてステッカーの前で手を動かすと、センサが受け取る赤外線の反射光の強さ(検知レベル)に応じて、センサ本体のLEDランプの光り方が変化します。具体的には、手が検知エリアの端にある時は「遅い点滅」、中心に近づくにつれて「速い点滅」へとリアルタイムに変化するようプログラミングされています。

2. 勘に頼らない、確実な位置合わせの実現

これにより、設置業者はステッカーの前で手を左右に動かしながら、LEDランプが「最も速く点滅する(または点灯に変わる)位置」を探すだけで、検知エリアの「ど真ん中(ピーク位置)」を正確に特定することができます。

手の位置と検知レベル、点滅速度の関係図
図2:手の位置(P1〜P5)と検知レベル(L)の関係。検知エリアの中心(P3)で反射が最も強くなり、そのレベルに応じてLEDの点滅スピードが変わることで、位置ズレを視覚的に把握できます。(出典:特許第6795136号)

図2に示されるように、最もレベルが高い「P3」の位置とステッカーの位置が合っていなければ、センサの角度をカチッと微調整すればよいのです。

💡 技術のポイント:ON/OFFではなく「アナログな強さ」を伝えるUI

この特許の最も秀逸な点は、センサの出力を単なる「検知した(ON) / していない(OFF)」ではなく、「どれくらい強く検知しているか」というアナログな情報を「点滅速度」という直感的なユーザーインターフェース(UI)に変換したことです。特別なハードウェアを追加することなく、既存のLEDを活用するだけで、現場の作業負担を劇的に減らすことに成功しました。

【効果】施工現場のストレスをなくし、快適な自動ドア環境を提供

この能動型物体検出センサにより、設備・建築の現場に以下のような大きな効果がもたらされます。

  • 設置・調整作業の時間を大幅に短縮: 目視で検知エリアの中心を把握できるため、トライ&エラーを繰り返す必要がなくなり、施工時間を劇的に短縮できます。
  • 「開かない」トラブルの未然防止: ステッカーと検知エリアをピッタリと一致させることができるため、利用者にとってストレスのない確実な自動ドアの動作を実現します。
  • 特殊な測定ツールが不要: センサ単体で位置調整が完結するため、作業員が専用の機器を持ち歩く必要がなく、メンテナンス性にも優れています。

非接触技術が当たり前になった現代において、「施工する人」の苦労に着目し、ちょっとしたソフトウェアの工夫で大きな課題を解決した本特許は、滋賀県知事賞の受賞にふさわしい、社会実装力の高い優れた発明です。

【補足】この記事で登場した技術キーワード

能動型物体検出センサ
自ら赤外線などのエネルギーを投光し、対象物からの反射を捉えることで物体の有無や距離を検知する方式のセンサです。周囲の熱源を感知する受動型(パッシブ型)に比べ、検知エリアの境界を明確に定義しやすく、意図的な動作を捉えるスイッチ用途に適しています。
赤外線
可視光よりも波長が長く、目に見えない光の一種です。光学的特性が安定しているため、物体検出のメディアとして広く利用されますが、不可視であるため、設置時における実際の検知範囲の特定には電気的な信号処理や補助的な報知機能が重要となります。
検知レベル
センサが受信した反射光の信号強度をデジタルまたはアナログの数値で表したものです。検知の閾値を判断する基準となるデータであり、この数値の増減を可視化することで、センサの感度設定や位置合わせの最適化が可能になります。

特許情報まとめ

発明の名称 能動型物体検出センサ
特許番号 特許第6795136号
特許権者 オプテックス株式会社
発明者 島津 正之、池田 学恭、下地 健太、前田 卓哉
出願日 平成27年4月27日 (2015.4.27)
登録日 令和2年11月16日 (2020.11.16)
受賞歴 令和7年度 近畿地方発明表彰 滋賀県知事賞
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